神話の力

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 いま読めて本当に良かった。
 もっと昔に読んでいたら、ワケのわからん胡散臭い本として捨てていただろう。
 ちょっと前に読んでいたら、単なるおもしろ本として読み飛ばしていただろう。

 アンダーラインで真っ赤にしてしまったので、特に「来た」ところを数カ所引用する。


P77

「あらゆる神話は限界領域内の特定の社会で育ってきました。それは他の神話と衝突し、相互関係を持ち、やがて合体して、より複雑な神話になるのです。
 でも、現代は境界線がありません。今日価値を持つ唯一の神話は地球というこの惑星の神話ですが、私たちはまだそういう神話をもっていない。」

 今まで私たちが持っていた「神話」は、ある限定された場所の人々をメンバーとして、それ以外の人を「外」へ追放する思想を持っていた。
 しかし、国境の意味が薄くなった現在では、もはや「外」は存在しない。
 地球規模で、地球の全てをメンバーとする「神話」が必要になっている。


P220
 「自然に本来備わっている神性」を我々が自覚する方法。

「部屋に座って本を読む――ひたすら読む。然るべき人が書いたまともな本ですよ。すると知性がその本と同じ高さまで運ばれ、あなたはその間ずっと、穏やかな、静かに燃える喜びを感じ続けるでしょう」

 読書について語った言葉で、こんなに情熱的で、なおかつ正確なものが今まであっただろうか。
 この本を読んでいる時、まさにこの状態だった。

P437

「私が言いたかったのは、自分のエゴ・システム、自分の欲望に従って生きるのではなく、自分の内面にある人類意識――キリスト――とでも呼べそうなものに従って生きるべきだということです」

P438

「われわれは自己の生活領域内で――子供の、妻の、愛する者たちの、隣人の――救いの手にはなれるが、決して救い主にはなれない」

 私たちは、自分が自由に行動していると考えているが、それは自分の欲望に服従しているに過ぎない。
 そうではなくて、「自分の内面にある人類意識」、つまり「地球規模の神話」に身を任せ、その担い手(媒体/メディア)として生きることで、初めて自由と人間性を獲得できる。


 神話について、学びについて、生き方について、多くのことを教えてくれた一冊だった。
 また未来に読んだ時も、きっと新たな価値を発見できるはず。