知覚の扉

知覚の扉 (平凡社ライブラリー)

知覚の扉 (平凡社ライブラリー)

 オルダス・ハクスリーという小説家・知識人が、メスカリンっていう薬物を摂取した時の体験を語る本。
 どうも、この本がニューエイジ系の――幻覚剤とか東洋の神秘とか自己の内面とか言う人達の源流にあるらしい。


 著者は自分のドラッグ体験について、ヘンに「私は宇宙の真理に触れた!」とか、「これがインド思想でいうサマーディーの境地か……」とか言うんじゃなくて、

「ものの遠近はなるほどいささか奇妙に見え、部屋の壁はもはや直角に交わらないように見えた。しかし、こういったことは真に重要なことではなかった。真に重要な事実は、空間関係が大して問題と感じられなくなったということ、そして私の精神が世界を空間的範疇以外の見方で認識することを始めていたことであった」

 というように、具体的かつ論理的に、自分の意識に起こった現象を描写している。
 そして、その感覚に、哲学理論との関連や、芸術作品との共通点を見出して解説していく。
 ドラッグを使わないまま、ドラッグを使った時の感覚を理性で疑似体験した気分だった。
 というか、もし自分がメスカリンを服用したとしても、これほど多くのことを考えることはできないわけで、メスカリン以上に「効く」本なのかもしれない。
(注:この本は、人間の可能性を開拓するために薬物を用いるというスタンスで書かれています。気持ちよくなりたくてヤクをキメてるわけではないはず)


 著者は、「人間は本来なら世界の全情報を感覚できるが、目先の生存のために脳が一種のバルブとして情報を制限している」という説を支持し、メスカリンが脳のバルブ機能を抑制するから幻覚=ほんらいの感覚が発生するのだと説く。
 割とうさんくさい話だけれど、考えてみれば、その辺に転がっている石は世界の全情報と繋がっているはずだ。なぜなら、石は世界の一部だから。
 一方で、人間は「自分/世界」という対立を考え、自分と自分以外の間に壁を作る。エヴァで言うとATフィールド?
 その壁こそが「自我」の殻であり、脳が産み出した生存のための機能なのだろう。
 メスカリン等の薬物は、脳の働きを抑制することで、自我の殻を薄くする。その結果、自分の意識と世界が繋がっているという錯覚、あるいは真実を体験することができると著者は説明している。
 いや、ほんとはもっと学術的にというか、教養にあふれる形で言っているのだけれども。