巨象も踊る

巨象も踊る

巨象も踊る

○あらすじ
90年代、マイクロソフトやオラクルに押されて潰れかけていたIBMを再建した経営者の本。
超巨大組織であるIBMを、いかに変えるか。
本の中で触れられている大きな3点を以下にまとめる。

・事業をとらえなおす。
 IBMは、多様な情報技術に手を出しすぎて、ごちゃごちゃと肥大化していた。

「正直言って、93年の時点で、わたしにしろ、わたし以外のだれかにしろ、一から出発するのであれば、IBMのような企業を作ろうとはしなかっただろう」(P89)

 しかし、ガースナーはその多様性を生かす道を選んだ。
 IBMは様々な製品を売る企業ではなく、様々な製品を通じて、情報技術のソリューションを提供する企業であると事業を定義しなおした。

・組織の外側に目を向ける
 IBMは、市場の唯一の覇者である時間が長すぎた。
 外側にライバルが存在しないので、社員は内側の政治ばかりを気にするようになっていた。
 ガースナーは人事制度や報酬制度を改め、社員が力を注ぐ先を変えた。

・企業文化に真正面から取り組む
 ガースナーによれば、企業文化は経営の一つの側面ではなく、経営そのものである。
 企業文化を変える方法について、ガースナーは、社員の一人ひとりが自信を取り戻すよう、何千時間もの時間を使って呼びかけるしかないと書いている。


○感想
 ガースナーさんがアツい。
 私は負けるのが嫌いだ。相手をぶっ潰すのが大好きだ!
 と公言し、社員には
 競争相手が君たちの家庭に入り込み、子どもや孫の教育資金を奪っている!
 とハッパをかける。えげつない。

 一方で、その経営はとても冷静。
 就任してすぐに着手したのは財務面の改革だし、最初の記者会見では「ビジョンを封印する」と言い切っている。

「ビジョンをまとめると、自信と安心感が生まれるが、これは実は極めて危険なことだ。ビジョンは大部分、志を表明するものであり、社内に熱意と興奮を作り出す役割を果たす。しかしその性格上、志を現実に変えるための道筋を示す点では役に立たない。
 繰り返しになるが、すぐれた戦略は大量の数量分析から始まる。現実をとらえるお困難な分析であり、これを知恵と英知、リスクを取る姿勢と組み合わせる」(P295)

 熱い情熱とクールな分析が、一人の人物の中で両立していることに驚いた。
 こういう知性、こういう経営者もアリなんだと思い知らされた。
 最近、危うく経営者はみんな稲盛和夫みたいな仏僧一歩手前みたいになってると思い込みつつあったので、このタイミングで読めて良かった。
 すぐには参考にならないけれど、大きな視野を持てるようになる一冊だった。