論語物語

論語物語 (講談社学術文庫)

論語物語 (講談社学術文庫)

論語のエピソードを小説仕立てにした本。明日の読書会の課題本。
言っとくけど、ヤバい。
この本で論語に目覚めた。
小説として面白く、人間の心の動きを克明に描写し、さらに論語のエッセンスがちりばめられている。
すごすぎる一冊。
ぼくを変身させた本の一冊として、後世まで記憶されるだろう。


例えば、最初のエピソード「富める子貢」では、子貢という、金持ちになった弟子が主人公で、「カネを持っているからといって奢らないようにしよう」と苦心する。
子貢は、年下の者に礼儀正しく接したり、謙遜したりして、金持ちになっても良い奴でいよう!とすごい気を使う。
で、孔子と会った時に、思わず「オレ、こんな感じに気を使ってるんですよ。これこそ先生の説かれている道徳の実現じゃないですか?」とドヤ顔をこらえながら話すと、孔子は子貢を優しく諭す。

「(略)へつらうまい、驕るまいと気を使うのは、まだ君の心のどこかに、へつらう心や、驕る心が残っているからではあるまいかの」
 子貢は、その明敏な頭脳に、研ぎ澄ました刃を差し込まれたような気がした。


そういうのあるあるー


論語の言葉って、なんか良い事言ってるっぽいんだけど、古代中国という環境と、漢文という書き方と、よく分からない孝の思想のせいで、あまり心に響かない。

が、この「論語物語」は、孔子と弟子たちのエピソードをユーモアを交えつつ、心の動きに注目して描いている。
心の動きとは、つまり、弟子たちの「孔子先生に認められたい」という自尊心だったり、「学問なら俺が一番だ」という自負だったり、「人としての道がどうこうよりも出世してぇええええ」という切実な思いだったりする。

そういう邪念を、孔子はたちどころに見抜き、弟子たちに教え諭す。
思い当たるフシが多すぎて、読みながらギクっとしっぱなしだった。
微妙な自尊心の問題が克明に描かれていて、読みながらいろんなコミュニケーション上の黒歴史を思い出した。
そして、孔子の弟子たちが黒歴史を糧にして成長しようとするところに励まされるのである。