田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」


岡山で天然酵母パンを作る渡邉格さんの本。
パン屋の本なんだけど、マルクスや、ミヒャエル・エンデや、「小商いのすすめ」が出てくる。

「腐らないお金」が利潤を生み続け、労働者が苦しい立場に置かれる資本主義。
マルクスの時代の紡績工場での過酷な労働は、今も形を変えて続いている(ブラック企業とか、パン屋の過酷な労働とか)。
マルクスは生産手段を共有して共産主義にすれば良いのではないか、と考えたけど、筆者は自前の生産手段を持ち、本当のパンを作る高度な職人技を身につけることで、自分の周りに小さな「腐る経済」を作れると考えた。
考えたというか、菌の声に耳を澄ましたら、そういう結論になったらしい。

変な本だ。
筆者はマルクスの言葉を借りて現代日本を分析するけれど、それに対するアンサーはすべて具体的なパン作りの技術や、「菌の声」として提出される。
思考の結果の本ではなく、パン屋としての実践が答えになっている。
どうして菌と経済が結びつくのか、読み終えてもよく分からない。
でも、筆者の実感として、菌が金を腐らせ発酵させる経済が存在していることはひしひしと伝わってくる。

最近、パン作りをするようになったので、読み返してみた。
市販の天然酵母でパンを作るのも難しいのに、タルマーリー(筆者のパン屋の名前ね。今度、鳥取に引っ越すらしい。行ってみたい)では、天然酵母はもちろん、天然麹菌でパンを作るというもはや難易度がよくわからないことまでやっている。
確かにこれは職人技だ。
自然農法と結びついた引き算のパン作りという話も気になる。
バターを入れるとおいしくなるとか言っているうちはまだまだ生っちょろいパン作りということか……